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続・映画レビュー

続・映画レビュー@木下

 

昨日に続き本日も映画レビューをいたします。

 

※尚、作品、人物に対する表現や見解等は、勝手な個人的感想ですのでご容赦ください。人物に対しましては、敬称を省略させていただく事が多いですが、こちらもご容赦ください。 また、本文中に一部ネタばれがありますので、作品をまだご覧になられていない方は十分にご注意ください。

 

では早速、先週観たなかから 『プライベートライアン』(1998年)

直訳すると「ライアン二等兵」、原題は”Saving Private Ryan”

第二次世界大戦時、ノルマンディー上陸作戦を舞台にした、スティーヴン・スピルバーグの監督作品です。

 

映画は冒頭、現在の戦没者墓地のシーンから始まり、そこから一気に時間を遡ります。

1944年6月6日のD-デイ。フランス ノルマンデイーのオマハビーチ沖の連合軍上陸艇内へと移ります。

そこから約20分間にもおよぶ戦闘シーンへ。

登場人物の人物描写やストーリーの背景説明等はなく、映画を観ているものは有無を言わさず、いきなり戦場に叩き込まれます。

そしてこの冒頭20分間にもおよぶリアルで悲惨な戦闘シーンは、間違いなく以降の様々な作品に影響を与えていると思われます。

 

そこにあるのは、悲惨なばかりの恐怖、戦争行為の愚かさ、人間の愚かさです。

かつての戦争映画といえば、味方と敵、言い換えれば良い者と悪者の戦い。そこには格好良く活躍する英雄(ヒーロー)がいて、その活躍や良い者の勝利を楽しむ映画が多かったように思います。(もちろん、そういう作品ばかりではありませんでしたし、それらを批判するものでもありません)

斯く言う私も、子供の頃は「コンバット」のサンダース軍曹に憧れたりしてました。

しかし、実際の戦場にはヒーローも居なければ良い者、悪者も居ない。人間同士が殺し合いをする愚かさと、恐怖、絶望しかありません。

私は戦争を知らない世代ですし、これは映画にすぎませんが、それでも初めてこの作品を観た時、冒頭のこのシーンにはかなりの衝撃をおぼえました。

(戦争の恐ろしさ、愚かさという点においては以前「プラトーン」の村での虐殺シーンを観た時、悲しくて涙が出ましたが、同等かそれ以上の衝撃でした)

 

さて、物語はというと同時期に4人の息子のうち3人を戦死で失った母親の元へ、フランス戦線のどこかに居るであろう4人兄弟唯一の生存者 ”ライアン二等兵” を探し出し帰国させるというお話です。

この任務を行うのはミラー大尉(トム・ハンクス)ら8人の兵士たち。

 

お話を通して人の命の重さ、価値についてがテーマとなっていると思います。1人の兵士を探して帰国させるために多くの兵士たちの命を危険にさらす、その価値に違いなどあるのか。将軍1人のために多くの兵士の命が失われるやりきれなさ等が語られます。

道中に仲間を失ったりしていく過程で兵士たちの中に、たった一人のライアン二等兵を助け出すために、彼ら多くの命が危険にさらされることへの疑問と不満が溢れてきます。

(裏話として、出演者は皆撮影前に10日間の過酷な軍事訓練が課せられたのですが、ライアン役のマット・デイモンだけは意図的にこれから外されたそうです。その後過酷な撮影が進み、ライアン二等兵の出演シーンから途中合流したマット・デイモンと他の出演者の間には「今頃ノコノコ出てきやがって」という空気があり、リアルで緊迫した雰囲気が演技となってカメラに映し出されたそうです。)

 

印象に残るシーンがいくつかあるのですが、例えば部隊が教会の建物で暫しの休息をとるシーンで、ミラー大尉が頼れる腹心的存在のマイク軍曹(トム・サイズモア)に、責任者として兵士たちの命を預かる重責と葛藤について愚痴ぽく話すシーン等があります。

(トム・サイズモアといえば後にソマリアを舞台にした「ブラックホーク・ダウン」で銃弾飛交う戦場の中、兵士たちに不安を与えないためか、兵士達が必死に物陰に身を屈める中「俺には弾は当たらない」と言わんばかりに胸を張って堂々とかっ歩する車両部隊の指揮官役で出ていました。彼はこういう役がよく似合います。)

 

また、途中ドイツ軍との戦闘で、敵の銃弾に衛生兵が倒れます。

身体が動かない自分の代わりに、仲間たちに自分の傷の状態を聞き、自らの死を悟った場面などは、痛々しくて心が苦しくなりました。

 

さて、彼らはライアンを見つけ出し、無事に戦場から助け出すことが出来るのか。

 

映画冒頭、現在の戦没者墓地からいきなり過去の戦場へ。終盤では逆の順番で展開して幕を閉じます。

これらの手法はスピルバーグのお気に入り映画の1つ(私も好きな作品)である「アラビアのロレンス」へのオマージュであると言われています。

スティーヴン・スピルバーグの力作です。

 

先にも書きましたが、私は戦争を知りませんし、私の子供も戦争を知らない世代です。

これから先も戦争を知らない世代がずっと続くことを祈ります。

でも、今も世界中のどこかで戦争や紛争が起こっています・・・・。


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